「ISO14000sを活用した地域環境づくり」

(財)えひめ地域政策研究センター調査研究情報誌「EPCR」(autumn 2001 No.4)に掲載

手垢に汚れた現代のバイブル?

「対訳ISO14001・14004 環境マネジメントシステム」という本がある。新書版ほどの大きさで厚みが2pほどあり、審査員の必携といわれている。ほとんどの審査員が持っていて、そのキャリアの証しのように手垢にまみれている。受験生の英和辞典のようだ。この本の特色は、左ページに英文、右ページに和文の規格・要求事項が書かれていること。左の英文がISO14001、右の和文がJISQ14001である。今日も審査員たちは多くの書類とともにこの一冊を携えて日本狭しと飛び回っている。その数およそ2000名ほどである。

あなたは「環境」を定義できますか?

 まずこの質問から始めたい。環境を定義していないと不毛の議論になりかねない。 例えば、環境を汚染するのは人間だけであり、企業経営者などはそのことを知っているため、着々と「リストラを実行している。」というブラックジョークがある。ISO14001では次のように見事に定義している。
環境とは「大気、水質、土地、天然資源、植物、動物、人及びそれらの相互関係を含む、組織の活動をとりまくもの」である。

注)組織とは、法人か否か、公的か私的かを問わず、独立の機能及び管理体制をもつ、企業、会社、事業所、官公庁もしくは協会、又はその一部もしくは結合体。

あなたのまわりにもISOが・・・

 身近なところでは、フィルムがある。フィルム感度が、以前はASA100とかいう表示であったが、今はISO100ISO400と表示され、ISO規格となっている。 クレジットカードの寸法や裏面の記録フィルムの規格もISOであり、当たり前のように使用し重宝している。ほかにも、ISOねじ、A版用紙、チャイルドシートなどたくさんある。グローバルスタンダードのありがたいところである。

はじめに                                                     

 1996年秋に「アイエスオー イチマンヨンセン・・・?」が誕生した。

 ISOとは何ぞや?

 イチマンヨンセンとは何ぞや?

ISO14000s(以下環境ISOと呼ぶ)を2つに分けて説明したい。ISOとは、「国際標準化機構」という民間組織である。わかりやすく言えば、IOC(国際オリンピック協会)と同じようなものと考えられる。IOCに対し、日本国内にJOCがあるように、ISOに対し、国内にJAB(日本適合性認定協会)がある。法律でも何でもない、自主的に取り組む「しくみ」を持ったもので、決して強制されたり貿易障壁になるものでもない。
 1番から9000番まで主に寸法・規格を定めてきた。9000sに「システム」を持ってきた。これがISO9000s(シリーズ)として発行されている品質ISOであり、14000sも数種類のシリーズとして発行されていて、数字そのものに取り立てて意味はない。
この環境ISOが今注目を集めている。それが地域の環境づくりに、どのように関連し役立つか、またどのように応用できるかを考えてみたい。
まだISOはともかく、環境に関する深い理解のないまま論じることをお許し願いたい。なお、内容等について、ご批評をいただければ幸甚である。

ISO14000シリーズの概要                                             

1)認証取得の対象

 環境マネジメントに関する規格は、ISO14000sと呼ばれている。ISO14000シリーズ規格で発行されているのは、ISO14001、ISO14004、ISO14010、ISO14011、ISO14012、ISO14020、ISO14040の7つである。このうち、認証取得の対象となるのは、ISO14001のみである。

2)日本における規格化

 ISO14000シリーズのうち、すでに発行されている規格は、日本においても同様の内容で、JIS規格として制定されている。
したがって、輸出企業に限らず国内だけで活動している企業においても、環境マネジメントに関する国際規格が採用されることになる。

3)概要

 ISO14000シリーズは、「環境マネジメントシステム」、「環境監査」、「環境パフォーマンス評価」、「ライフサイクルアセスメント」、「環境ラベル」からなる。

     環境マネジメントシステム
環境マネジメントシステムはISO14001、14004で規格化されている。
14001:要求事項について
14004:全般的な指針(ガイドライン)
     環境監査
14010:環境監査の一般原
14011:環境監査の手順
14012:環境監査員の資格基準
     環境パフォーマンス評価

環境パフォーマンス評価は、組織が環境に与える影響を測定、分析、評価する方法であり、14031で規格化された。
     ライフサイクルアセスメント
製品の設計・原材料調達から廃棄までの環境影響を評価し、その環境影響を最小化するための手法であり、14040シリーズは順次規格化発行された。
14040:一般原則と枠組みについて
14041:ライフサイクル評価解析
14042:ライフサイクル影響評価
14043:ライフサイクル改善評価
     環境ラベル
環境ラベルは、製品の環境への影響の度合いなどを、ラベルを通して消費者に伝え、環境に優しい製品にインセンティブを与えるための規準で、ISO14020・14021・14024は規格化されている。
次の3種類のラベルの基準設定の手順が定められている。
タイプT:第三者機関の認証による環境ラベリング制度。
タイプU:企業がマーケティング活動の場で行う、環境についての自己主張に関するもの。(たとえば、リサイクル可能など)
タイプV:製品の環境負荷を各環境影響要素ごとに定量化した指標を定め、データを製品に表示するもの。

世界での認証登録状況                                               

 下記の図―1は世界のISO14001及びEMASの登録件数である。(平成13年6月現在)環境ISOが発行したのは1996年10月であったから、約4年強で6648件の登録がなされ、2位英国の2500件に大きく差をつけて、世界一の登録国となっている。
EUを中心にISOより厳しいEMAS(イーマス)という規格がある。この特色は、環境公証人たる第三者の所見を入れた環境報告書を作成する義務があることである。ドイツなどではISOよりEMASのほうが取得が多いのがわかる。会計基準で、公認会計士が所見を述べた決算報告書が公表されるのとよく似ている。


国内での認証登録状況           

 図―2は、都道府県別ISO14001審査登録状況(平成13年8月末現在)、認証取得件数は6955件である。東京都の682件を筆頭に、愛知県、大阪府がベスト3であり、沖縄県、長崎県、高知県、徳島県がワースト4となっているが、人口比や事業所数にもよると考えられる。別の視点でみると、滋賀県、三重県、宮城県に取得件数が多いのに注目する。「環境」に関して割と積極的に独自の政策を打ち出している県である。

 まず、滋賀県は人口は約134万人で、愛媛県より少ないにもかかわらず、174件の登録がある。愛媛県が43件だから、単純に4倍の数である。三重県人口は185万人で179件、宮城県は人口236万人で111件と、やはり県別に詳しくみていけば、環境ISOに対する温度差を感じる。

ISO14000sの特徴をあげてみれば                                           

1)PDCAサイクルを回すこと。

P(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Act)
計画し、実施し、検証し、改善する

これは難しい話ではない。個人としても、意識・無意識にかかわらず、自然にこのパターンで活動している。日曜日の朝起きてドライブをするとしよう。@まず何時ごろ、誰とどこへ行こうか考える。Aドライブしてくる。B帰り道、楽しかったところはどこか、金額の割によくなかったところはどこか、帰りはラッシュの時間で困ったとか考える。C今度行くときは違うルートで、早く出かけようと計画する。次の日曜が待ち遠しい。
ISOも同じようなものである。自分自身で適切にPDCAを回しているひとは、あらゆる側面で有能な人であろう。自己マネジメント(管理)できない人は組織のマネジメントにも成果を期待できない。

2)グローバルスタンダードとはいえ・・・

 グローバルスタンダードのISO公式文書は英語、フランス語、ロシア語の3ヶ国語に限定されている。和訳されたものはあくまでJIS Q14001(日本工業規格)である。和訳文でわかりにくい箇所は上記3ヶ国語によると記されている。そのうえ、辞書はオックスフォードとISO事務局は決めている。なぜ公式文書に世界第1・第2の取得件数のある日本語とドイツ語がないのか。敗戦国は世界の主要国に入れてもらえない?これは私だけの僻みと思いたいが・・・。
ISOはヨーロッパ主導で、米国も日本もISO9000sに関して熱心ではなかったことにもよる。今も米国はISOに対して積極的ではなく、あくまで米国式スタンダードを追求し続けている。隣国中国の動きも要注意である。なにせ、国連において拒否権のある常任理事国である。中国は、2008年の北京オリンピックをきっかけに名実ともに世界の大国の仲間入りを目指している。急速な経済発展を優先させているところであり、環境対策においてグローバルスタンダードに足並みをそろえようとはしていないように見える。

3)適合しないということ

 品質ISOでは「不良品」とは言わない。ISOの要求事項等に適合していない「不適合品」と言う。不適合品と不良品には大きな違いがある。不適合品の取り扱いは次のようにする。

@修理して適合品とする。
A再度格付けする。(A級品をB級品とする等)
B顧客と相談してそのまま適合品とする。ただし価格を安くする等の条件の折り合いをつけて適合品とする。

環境ISOにおいても、不適合という言葉を使う。

不適合発生後のフローを記してみる。

↓ @不適合発生
↓ A応急処置をとる
↓ B根本原因を調査する(なぜそうなったか)
↓ C是正処置をとる(すでに起きた不適合に対応)
↓ D予防処置をとる(今後起きる可能性のある不適合に対応)
↓ E効果を確認する

○○県警、○○乳業などは、Aのステージで活動が停止している。B〜Eのステージまで行かない限りISO認証はおぼつかない。そういう組織こそ今すぐISO認証取得への具体的アクションをおこすべきである。そうすれば、何度も不祥事を繰り返すことはなくなるし、企業では、環境リスクを回避できる。

自治体の取り組み−千葉県白井町−

 自治体として、全国で初めてISO14001を取得したのは、千葉県白井町である。人口5万人程度の普通の町の大きな挑戦であった。取得年月日は1998年1月30日。やはり、ISOの導入はトップのリーダーシップによるところが大きかったようである。当時の町長は、次のように取得する意義を述べている。
 「行政を運営する上で、最小の費用で最大の効果を上げるのは優先課題のひとつである。白井町予算は近年、前年度比マイナスか微増で厳しい状況にある。町役場全体でISO規格に沿って環境対策に取り組み、コスト削減につなげられれば、町民の税金を無駄にしなくて済む。」
 具体的な取組は、町長が立てた環境方針に基づき、実現計画をたて、実行した結果を点検する。不都合な点は対策を盛り込んだ計画を再度立て、実行する仕組みである。内部監査に加え、毎年外部監査を受けてチェックするほか、3年毎の更新時にも監査を受けるわけで、職員の意識改革にもつながるのではないかと期待されている。
 1997年10月から96年度実績と比較した達成目標15項目を進めていった。その成果として、例えば、事務用紙の使用量を減らすことができたし、電気使用量を1%減らす目標に対し、97年11月は5.8%、12月は18.5%削減できた。着実に成果は上がっているようである。
 今後は、担当者だけでなく職員一人一人の意識向上を計り、「システム」と感じるのではなく、だんだんと自分のこととして取り組む仕掛けが必要である。現在、自治体のISO認証取得への意欲が高まり、2001年7月末現在で、235件に上る。本年度中には、およそ30の自治体が取得見込みである。四国内では、次の6件のみである。

高知県 工業技術センター
    県庁
    県環境保全型畑作振興センター
    県環境研究センター
徳島県 県庁
    松茂町

 四国内での県関係以外の自治体の取得はいまだ1件である。愛媛県で1件も取得されていないのも残念である。高知県庁のISO担当者に「取得も取得後も大変だったでしょう?」と聞いてみたところ、「取得した後、各企業等へのアドバイスができたり、特に法規制に関するアドバイスがしやすくなった。」とのこと。私の印象では、あまり肩に力をいれず、当たり前のことを当たり前のように行なっているという感想を持った。白井町にしろ高知県にしろ、また三重県や滋賀県にしろ、積極的にISO認証取得に取り組んでいる自治体は、首長が環境対策に強い意志と決意を持って臨んでいるところである。
 企業が取得をしようとする場合、環境法の適用等について、県庁や市町村に定期的に問い合わせるような仕組みになっていることが多い。そのような場合、ISOの心得がない担当者であれば適切なアドバイスは無理であろうし、企業側も頼りにしなくなる恐れがある。規格要求事項の「4.3.2法的及びその他の要求事項」には「組織は、その活動、製品及びサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持しなければならない。」とある。
 今後、愛媛県でも各自治体が早期にISO認証取得に取り組むことを期待している。

(事例その2)

愛媛大学農学部の自己宣言に向けての取組

 ISO14001の認証登録の動きは大学にも起こっている。武蔵工業大学環境情報学部(横浜市)は1998年10月日本の大学で初めて認証登録された。大学では世界でも初めてである。環境に配慮したキャンパス作りの先駆けとして注目されている。
 愛媛大学農学部においても環境ISOに注目し、検討ワーキング委員会を設置して研究されていた。1999年3月末、ISO規格認証取得検討ワーキング委員会(7名の教官連名)が当時の学部長にEMS策定の答申を行なった。その後、ISO認証取得実施検討委員会が正式に発足し、具体的には環境委員会が発足し、作業に入った。2000年10月14日、農学部創立100周年記念日に、「環境宣言(環境方針)」が白石学部長から発表された。「生物生態を扱う農学部だからこそ21世紀に向けて環境にやさしい学問の構築が求められる。考えられる限りのエコキャンパスづくりを目指す。」と話された。愛媛大学農学部では、第三者認証で登録を目指すのではなく、自己宣言を行うというところに特色がある。
 自己宣言とは、自ら計画、実施運用し、監視及び測定まで行い、最後に学部長による見直しを行うことを要求されている。ISO14001の規格どおりに活動し、自らそのシステムが構築されたことを内外に宣言することである。自己宣言は、ISO14001の序文に次のように示されており、一つの選択肢としてお勧めできる。
 「この規格は、審査登録の目的、及び/又は自己宣言の目的のために客観的に監査しうる要求事項だけを含んでいる。」
 第三者審査登録機関に高い?審査料を払わなくてもよいわけだから、自信のある組織にはこの方法をお勧めするが、やはり、「私たちはこのシステムを完全に構築して運用している。」と宣言しても一抹の不安が残るのは確かである。 自己宣言を行い、2〜3年自らのシステムを継続的に改善しながら運用したうえで、環境マネジメントシステム審査員にチェックしてもらうことを提案したい。なお、取引先の関係などでどうしても第三者による認証登録が必要なら、必要になった時点で、正式に審査機関に依頼して登録すればよいと考えている。 このようにいろいろな意味でこのシステムは多様なリクエストを満足させる骨太のしくみである。

 さて、愛媛大学農学部では自己宣言に向けた取組が行われているが、

@構築の範囲に学生をどう位置づけるか。
A教職員の内部コミュニケーション。
B組織の形態が並列的である。

このような点で一般のピラミッド型の企業組織より難しい条件がある。トップマネジメントの権限が大きい企業では、比較的意思統一が計りやすいが、大学でのEMS構築には手間と時間が必要である。大学の生き残りをかけて多くの大学がISO取得に向かっている今、農学部には、環境ISOに意義を確認してがんばってほしい。

 教職員がEMS構築の努力中にうれしいニュースがあった。学生たちが環境ISOを中心にしたNPOを設立したのである。
 農業や漁業など第一次産業の環境問題への取組を支援しようと、愛媛大学農学部の学生ら6人が特定非営利活動法人(NPO)「農林畜水産環境管理協会(AEO)」=代表理事・大崎秀樹農学部研究生(22)=を設立した。学生によるNPO設立は県内初。環境問題への取組は工業分野で盛んだが、AEOは「第一次産業を支援するNPOは全国でも例がない。」としている。AEOは今後、農漁協などの組織や農山漁村を対象に、国際標準化機構が定める環境管理の国際規格・ISO14001の認証取得と運営管理を支援。総合的な環境マネジメントシステムの構築で、省エネルギー・省資源問題に取り組んでいる。
 その他、循環型社会づくり推進計画やホームページ作成など、多様な事業展開をしている。国立大学にNPO法人が発足し、地域社会と連携を図ろうとする動きに私は大いに期待を持って注目している。

(事例その3)

着実に前進するコープえひめ環境マネジメントシステム

 生活協同組合「コープえひめ」は食の安全を標榜して成長を続ける組織である。この組織の環境対策は「筋金入り」である。設立当初から「職の安全」「生活者の視点」「環境の保全」を運営のコンセプトとしてきた。
 私は1998年4月、コープえひめの環境監査委員会員に任命された。その年に導入された「環境マネジメントシステム・監査」はしかし、ISO14001のシステムとは異なり、コープえひめの独自のシステムであり、自主的な取組であった。
 その後、2000年にISO14001取得にむけて本格的に取組を始め、本年3月に認証登録を果たした。中・四国のコープのなかでは最初の認証取得となった。数ある組合組織でISO14001の第三者認証登録を得たのは中・四国でただ1件である。 コープえひめは、独自の環境マネジメントシステムを2年以上運用した後、約10ヶ月をかけて認証取得した。通常1年程度で取得した組織と違って、システムがしっかりと定着している。この点は、これから取得を目指す組織にとって大変よい見本となる。つまり、今日からできる環境配慮がたくさんあるということであり、認証登録という証書には過大の意味がなく、実質的な運用の仕方とその後の継続的改善に大きな意味があるということである。 コープえひめの環境への取組のひとつに、組合員を中心とした環境学習活動も挙げられる。酸性雨調査や、重信川の水辺の生き物調べをとおして多様な環境教育を行っている。組織の活動が地域社会でも大きな役割を担っている点に注目したい。

次に、コープえひめ理事長大川耕三氏の「よりよい地域づくりを」と題したコメントを記しておきたい。

『このたびコープえひめは、環境マネジメントシステムの国際規格である、ISO14001の認証を取得することができました。私たちは創立以来27年間、環境をテーマにした活動に力を入れて、よりよい洗剤使用や、我が家の排水チェック活動、牛乳パック・トレー・チラシ・卵パックのリサイクル活動などに取り組んできました。 今回のISO14001認証取得はその集大成であり、新たなスタートでもあります。21っ世紀は「環境の世紀」「人間を取り戻す世紀」といわれていますが、これまでの延長ではない、まったく新しい生活のありようや新しい社会経済システムづくりなくしては、到底実現できないことは言うまでもありません。 そのためには、私たち市民一人一人が環境に配慮した暮らしを考え、行動することと併せて、企業や事務所がこの問題に本格的に取り組むことが欠かせません。 今回のISO14001の認証取得が、県内企業や地域社会全体の環境に対する取組のいっそうの活性化につながり、「この町に住んでいてよかった」と言われる日本一の街づくりが進むひとつのエネルギーになれば幸いです。 コープえひめは、環境に配慮した取組を一層進化させ、今後とも地域社会の中での役割を果たしていきます。』

地域社会に環境ISOのエッセンスを!                                         1)経済社会の中にどのように環境保全を組み込んでいくのか?

 「環境保全を内在化した経済社会の実現に向けて」と題して、平成11年度の環境白書に次のように示されている。つまり、経済活動の中に環境保全の視点を着実に組み込むためにどのような取り組みが必要かという方向性を示している。
     @環境効率性を高める企業行動の推進
     A環境合理性に基づく経済行動の推進
    
B地域主導による環境保全と地域経済の融合
 環境保全に関する活動の大半は地域レベルで行われており、経済社会に環境保全を内在化していく基礎は地域社会に置かれ、その取り組みはあくまで地域主導が望ましいとされている。
     @これまでの公害防止における自治体や地元企業住民の取り組み経験などを生かす。
     A地域の多様な自然環境と独自の歴史・文化を尊重する。
    B蓄積された有用な人材、テクノジー、ノウハウを活用する。

以上の点を環境保全に生かした地域経済の発展を目指すことが、21世紀型地域づくりのひとつの方向であると考える。経済(エコノミー)と環境保全(エコロジー)は分離して考えることができない。なお、そのバランスをとる手腕が問われる。
 循環型社会づくりは、地域特有の資源を最大限生かし、“環”を作る作業であると考えている。健全な生態系を維持し、自然から得られる資源を利用しやすいのは、疲弊した都市部より地方のほうである。経済的に発展する余地が地方にも大いにあると考えられるのである。
 課題は、地方にある「財」をどのように見つけ出すか、どのように活用するか、果たして有用・有能な人材はいるのか?ということである。地方の経済が停滞しているなかで、「環境保全対策」はかろうじて光を見出せる分野であることは間違いない。

2)デジタルデバイドとエコデバイド

@デジタルデバイド

  加戸知事が就任早々に行なったことのひとつに、携帯の通じない山間中心地域に中継アンテナを立てることであった。どうやら、県内遊説中に携帯の通じない役場周辺の多いことに驚かれたようである。道路を整備するより情報の設備整備により力を入れたのは、その後の愛媛県情報ハイウェイ構想をみても、大きな評価ができる。しかし、現在、まだブロードバンド普及が県内限定的であることは強く認識すべきであろう。
  中山間の小集落でも無線によるブロードバンドがすぐにでも、少しの投資で可能である。デジタル化の格差を早急に解消する必要がある。一度ブロードバンドのつなぎ放題を経験すると、生活スタイルが確実に変わる。

Aエコデバイド

  いま好感度の組織は、環境対策に本気である。この本気が大切である。「地球に優しい企業」です・・・とは、すべての組織がのたまっている。まるで呪文のように。しかし、本気ではないところも多いように見受けられる。ここに確実に格差が生じてきている。また、その格差が拡大していることに危惧を感じる。
  製造業、サービス業を問わず、総論は立派に論じられるが各論はさっぱりである。各論に入らない限り、何の問題解決にもならないし、ビジネスチャンスすら逃してしまう。眼に見える状態になったときはすでに格差がつきすぎたときであり、対応が遅れて「負け組」の仲間に入ったときである。
  全国の中小企業の平均従業員数は50名以下が圧倒的に多い。私の知る中小企業団体の平均は30名程度である。この50名以下の中小企業のISO14001取得企業は、全取得企業のうち5%程度である。愛媛県内では10月20日現在44社が取得しているが、ほとんどが大企業である。今後、中小企業の取得は増加すると考えられるが、経営者のマインドはそう高くはない。「コストに見合う効果が見えにくい。」ということに尽きる。これに対して金融機関や行政は、財政的支援・情報提供などをもっと強化してほしい。そうしないと、環境ISOで武装した大企業は、地域の中小企業を相手にしなくなる可能性が大きい。単に、「技術力がある。」「営業力がある。」だけでは、競争に勝てない時代になってきている。
  ITと環境が21世紀を拓くキーワードだ。そのうちの環境を重視する企業経営はISOを抜きには考えられない。
  中小企業にとってISO認証取得は、逆に言えば大きなチャンスなのだ。

3)ISOとディスクロージャー

 環境ISOと品質ISOの大きな違いは、ディスクロージャー(情報公開)という点である。つまり、環境ISOには、ディスクロージャーが規格で要求されているが、品質ISOにはその要求がない。よく考えれば当たり前のことで、品質ISOに一般的ディスクロージャーが要求されていると困ったことになる。企業が特に秘密とする情報が、顧客以外に「漏れる」可能性があるからである。逆に環境ISOは積極的にディスクロージャーを求めている。具体的にいえば、4.2環境方針は必ず公開しなければならない。ローソンは環境ISOを取得している企業のひとつであるが、お店に入って、「環境方針を見せてください。」と頼んでみてほしい。もし、「見せられません。」とか「知りません。」などという応答が返ってくるようだと、不適合とみなされる。きっと、「どうぞ、これです。」と見せてくれるか、丁寧なところはコピーをいただけるだろう。
 ただし、何もかもすべて一般公開を要求しているわけではない。
 4.4.3コミュニケーションの項では、「組織は、著しい環境側面について外部コミュニケーションのためのプロセスを検討し、その決定を記録しなければならない。」とある。つまり、自ら著しい環境影響の原因となる事柄であると決めた事項に対する外部からの苦情については、事前にどのようにディスクロージャーするかを決めておきなさいと要求されている。公開する場合、それをいつ、どのような方法でするかを文書化しておくことが必要であり、もちろん公開しなくてもいいとある。
 企業もそうであるが、特に自治体の認証登録は、文書体系(膨大なマニュアル)が一般公開されるところに大きな意味がある。認証登録したほとんどの自治体は全文書を公開しており、丁寧なところはCD版まで実費で送ってくれる。ホームページでの公開などは当たり前になっている。ディスクロージャーという点で、環境ISOの効果は想像以上に大きい。

内発的発展のために                                                

 愛媛県は海岸線が長いけれども、平地部が少ない。隣の香川県へ行けば、平野の広々していることに驚きさえ感じる。道路整備が行き届き、ドライブしていると方向が定まらず、方向音痴になったかと思うほどである。公共投資の有効性について考えてみると、道路整備については愛媛県は分が悪い。急峻な山岳地を多く抱えるハンディキャップは大きい。経済基盤の充実のための道路整備と考えれば、これまでの公共投資の政策評価には厳しい目を向けざるを得ない。
 しかしながら、船から鉄道、鉄道から道路へと輸送の主役が移り、これからは情報のルート(例えば光ケーブル等)整備に重点が移っているとすれば、「地域力」向上に対応の仕方も変わってくる。競争する土俵が対等になってくるといえる。
 愛媛県では、海岸線を中心に産業が立地している。南予における養殖業、今治地方のタオル産業、新居浜・西条の重化学工業、また川之江・伊予三島の紙関係産業であるが、現在の状況や将来的に必ずしも安心できる状態ではない。中山間地域ではそれ以上の不安がつのっている。「いったい柑橘は生き残ることができるのか?」「林業の未来は?」といった不安がある。現在、生産条件の不利な地域で頑張っている方向が果たして内発的発展につながっていくのだろうか?

1)エコノミーとエコロジーの融合

 地球環境問題とりわけ温暖化ガス削減目標に対する京都議定書などの、環境保全に対する規制強化に対し、日米とも経済界は本気で抵抗している。日本のGDP向上が世界から求められている現状では、言い分は理解できる。しかし、環境問題は急激な時間的空間的広がりで待ったなしである。今経済が苦しいから環境は次だという認識は変えなければならない。過去、マスキー法による規制は、わが国の自動車産業を強化し、最先端にまで押し上げる原動力となった。その他、公害防止規制は素晴らしい公害防止関連産業を生むなど、環境に関する規制をバネに経済を発展させてきた。経済VS環境の対立という構図を転換して、環境対策は人を幸せにする手立て、またビッグビジネスに発展する可能性を秘めたチャンスと考えたい。

2)ISOの波及効果

 前述のISOとディスクロージャーの項でもその波及効果が大きいことを述べたが、別の側面からも波及効果が期待できる。
 現在、品質ISOや環境ISOに携わっている組織は愛媛県内に約200件ある。その組織にISOのエッセンスが行き届いたとすれば、その波及効果は大きい。組織人も家庭に帰れば一市民、地域の一住民である。ISOのエッセンスを地域活動の中で実践している人と最近知り合いになった。彼は地域でも「環境部長」として活躍している。松山市近郊の370世帯ほどの集落で彼は、企業で実践している環境ISOの手法(PDCA)を取り入れて、ごみ分別収集による減量化、リサイクルシステムの構築に取り組んでいる。住民アンケートを行い、20種類以上の分別、生ごみ処理等、地域の人と地道な活動を行っている。これに対し、自治体も住民の活動を支援し始め、今後、全町へこういったシステムを普及していこうと計画している。
 このように、環境ISOのエッセンスは地域で生かされ、自発的な活動が地域で展開され始めている。
 ここで3つの提案を行いたい。

1)環境ISOネットワークを作ろう。

 愛媛県内に43事業所がすでにISO14001の認証登録をされている。これらの事業所は、継続的改善を約束しており、登録を返上するまでPDCAを回し続けなければならない。そこで、人材育成やそのEMSの継続する適切性、妥当性、かつ有効性を確実にするため、それら事業所のネットワークを提案する。「えひめISOクラブ」なんていいのでは?

2)地方自治団体は環境ISOの認証取得に挑戦しよう

 率先して認証取得すれば、情報公開、企業支援、地域活動支援など、波及効果は計り知れない。

3)地域活動にも環境ISOを取り入れよう

 自治体はもとより、部落・集落単位の地域活動にも環境ISOの考え方を導入し、環境保全と地域づくりを一体化した活動を進めていこう。

おわりに

 環境ISOはその考え方を環境家計簿、簡易ISO(例:東京都庁版、京都府庁版など)、キッズISOなどにも発展普及してきている。当面は、汚染の予防が中心目的とされるだろうが、定着すれば、積極的に環境保全・保護のための運用に移行するはずである。環境ISOのシステムは本来その方向に進むべきものである。環境に関するグローバルスタンダードが私たちの生活に深く根付いていくことを望んでいる。

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